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弁護士会照会

 

 愛知県弁護士会は、日本郵便事業株式会社(日本郵便株式会社)に対して、弁護士会照会をしたが、これに応じてもらえず、債務名義を得ながら権利の実現ができなかった債権者とともに原告になって、照会先に対して、拒絶を不法行為とする損害賠償請求訴訟を提起し、予備的請求としても、照会先の報告義務確認請求の訴えを提起していました。

 この件をめぐり、最終的に最二判平成30年12月21日民集72巻6号56頁が出されました。

 

この件は、逆転につぐ、逆転という経過をたどり、出されたもので、

 

 

もとは、

 

第1審名古屋池畔平成25年10月25日判時2256号23頁が、損害賠償請求を棄却しました。

 

が、

 

対して第1次控訴審名古屋高判平成27年2月26日判時2256号11頁は、一部認容しました。

 

しかし、

 

その第1次上告審最三判平成28年10月18日民集70巻7号1725頁は、破棄差戻をしました。

 

ところが、

 

これを受けた差戻後の第2次控訴審名古屋高判平成29年6月30日判時2349号56頁は報告義務確認請求を一部認容しました。

 

しかしまた、さらに、

その第2次上告審最二判平成30年12月21日民集72巻6号1368頁は、確認の利益を欠き不適法という理由で破棄自判をしました。

 

これらの判決により、弁護士会への報告義務をめぐり、上記最高裁第1次上告審では、照会先に対する損害賠償請求訴訟の形態で司法判断を求める道を閉ざしたに等しく、上記最高裁第2次上告審では、報告義務確認請求訴訟の形態で司法判断を求める道を閉ざしたに等しい状況となりました。

 

傍論ではありますが、「23条照会を受けた公務所又は公私の団体は、正当な理由がない限り、照会された事項について報告するべき」という報告義務は認めているものの、その具体的な救済がなければ、弁護士照会は意義が半減してしまったといわざるを得ません。

 

資料を出さない人間が得をするという公平の観点からは受け入れがたい状況を解消しにくくなるというのは、何とも複雑な気持ちです。

 

ではどうするかという点で、いろいろな先生方が議論をしています。

 

上記判決は、弁護士会への不法行為の成否であるが、その依頼者や弁護士に対する不法行為、あるいは、報告義務確認の訴えという余地はありそうというのが、議論として出ています。

ただ、こうした判断は、報告義務の性質から厳しいという指摘もあり、そのようなご意見では、照会先と弁護士会で協議を行い、協定や取り決めをして、方策や基準等を検討していくことが提唱されています。

こうした状況を打開するためにも、逆に、裁判所が行う調査嘱託については、より積極的に発動させてほしいとは思いますよね。